各所で報じられているとおり、先週の水・木曜日に日本の首相がイランを訪問し、ハーメネイー最高指導者及びロウハーニー大統領とそれぞれ会談を実施した。このブログではその評価を分析することはしないが、革命後初めて日本の首相がイランを訪問し、更に最高指導者と面談をしたという事実については、素直に驚かされた。この調整を担当した当地大使館のみなさまや、日本の外務省及び在東京イラン大使館のみなさまの並大抵ならぬ奮闘があってこそだと思う。
今回の訪問に関して、イランのみなさまは冷静だった。国内の新聞やメディアでも逐次報じられていたが、そのラインはあくまで「(日本の首相がどんなことをできるのか)お手並み拝見」といったものだった。百戦錬磨のイラン指導部にとって、日本がどのような思惑でこちらに来るのかは調査済み、ということなのだろう。
また。街ゆく人は私が日本人と分かると次のように聞いてきた。
「で、日本の首相は何をしてくれるの?石油、どうせ買わないんでしょ」
私に聞かれても答えようがないが、逆に、彼らの切実な思いが伝わってきた。とにかくどの国でもいいから、通常の交易とそこからの利益を享受できる環境を整えてほしいということだ。言葉ではなく、実が欲しいのだ。
この国は40年以上前の革命以来何らかの形で制裁を受けてきた。現在の制裁は過去のそれに比して理不尽かつ影響が大きいものだ。身近な例を挙げれば、最近買い物をしたとき、以前と同じぐらいの量をの買い物なのに、100万リアル程支払う金額が増えた気がすることがよくある。インフレが進行しているのだろう。結局、苦しむのはいつも一般の人々である。
私には、生活の苦しみを訴えるみなさまの話に耳を傾け、日本が早くイランと経済関係を通常に戻してくれるよう望む思いを受け止めることぐらいしかできない。今回の訪問が、長い目で見た時に良い結果をもたらす起点となることを祈ってやまない。
【ひとことペルシア語149】
u baa rayis-e jomuhur-e rouhani az sobh faalude mikhorad
(ウー バー ラーイセ ジョムフーレ ロウハーニー アズ ソブ ファールーデ ミホラッド)
:直訳は「彼は朝からロウハーニー大統領と朝からファールーデを食べている」。ファールーデとは、シーラズがおいしいとされるイランのアイスクリームで、そうめんのような細長い麺の形をしている。バラ水の味がほのかに漂い、レモン汁などをかけて食べると口中が幸せになる。これを一緒に食べるというほど、ロウハーニー大統領と仲がいい、という意味。政治的なつながりが強いことを示す。バスタニー(一般的なアイスクリーム)を食べるのではだめらしい。
余談であるが、字数制限が厳しい日本の新聞でよく見かける「ロハニ」大統領は、そのとおりに発音しても絶対に誰の事かわかってもらえない。「ロウハーニー」大統領と、きちんと伸ばしてください。
【書物で知るイラン19】『現代イランの社会と政治』山岸智子編著、明石書店
:歴史、政治、医療、選挙、ネットワーク、西欧との邂逅から、近現代のイランを描きだした本書。
*なおこの記事は筆者の個人的な経験に基づいて記載されており、筆者の所属する組織とは全く関係がありません。