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154. エステグラールで朝食を

カテゴリ 中東

「来週の木曜日、エステグラールホテルの朝食ブッフェに行かない?」
とある日の夕方、妻の友人が妻に電話でこう誘ってくれた。私たちは二つ返事で、その誘いに乗ることにした。

この電話の主は、14歳の女子中学生・セターレちゃんである。昨年の秋にひょんなことから知り合って以来、積極的な彼女から2週間に1度ぐらいのペースでこのような誘いをもらい、私たちはほいほいとそれに乗っている。

なぜ、弱冠14歳の彼女がこれほどまでに私たちの事を構ってくれるのか。狙いははっきりしている。彼女はK-POPの大ファンで、韓国語のクラスにも通っており、ゆくゆくは奨学金を得て韓国に留学したいという強い希望を持っている。でもこれまで知り合った韓国人の友人は、多くが帰国してしまったとのこと。そのため、まだしばらくはイランにいるであろう、しかも多少ペルシア語ができる東アジア人を、キープしておきたいのだ。ことあるごとに、韓国人の友人ができたかを私たちに聞いてくることからも、その狙いが透けて見える。日本では韓国と経済関係で火花が飛び散っているというが、私たちとしても休日を過ごしてくれる友人はとてもありがたく、誘いには喜んで乗ることにしている。

他方、これはイラン人だからなのか、まだ子どもだからなのか、はたまた彼女の性格なのか分からないが、とにかく約束の時間・場所を決めるのが難しい。つまり、毎回、TOEICのリスニングテストを受けているようなことになるのだ。いつも、大事な情報が最後に駆け込みで伝えられる。例えば、こんな感じだ。

【問題文】
彼女:明後日昼ご飯を一緒に食べない?何時ごろから時間ある?
私たち:いいね。12時まで用事があるから、12:30~でどう?
彼女:もちろんいいよ。レストランはXXXでいい?
私たち:オッケー。じゃあ、明後日の12:30、XXXレストランでね。ばいばい!
彼女:バイバイ。。。あ!明後日はお父さんが13:00まで仕事に行っているから、レストランに行くのは3日後にしよう!それじゃね。

Q.レストランでの昼食の約束は何日後でしょうか?
A. in the restaurant. B. the day after tomorrow. C. No, I haven't. D. 3 days later.

というふうに、最後の最後、逆転ホームランが待ち構えている。もちろん実際の会話はこんなに簡単には進まず、明後日の昼食の約束が決まる前に、次の次の約束の提案がされたり、姉の試験勉強の日程を教えてくれたり、レストランについて複数の提案がなされたり、韓国人の友人ができていないかを問われたりするので、TOEIC対策にはもってこいだ。妻もペルシア語を勉強しているのである程度は対応できるが、電話は相手の表情が見えずなかなか難しいようで、結果、32歳の中年男性が14歳の外国人少女と約束の時間を決めるという事態がよく発生する。

最初ラッキーと思っていたが、結構込み入った話になることがほとんどなため、最近はまずこちらから質問をして可能な限り確実な情報収集に努めている。約束には大体父親が一緒だが、自分の事は自分でさせるという教育方針なのだろう、約束の段階で登場することはほとんどない。更に自分の携帯電話、父親の携帯電話、家の固定電話などあらゆる電話を駆使して連絡を取りにくるため、知らない番号からかかってきて、電話をとると彼女だったということもよくある。

そんな彼女にまたとないチャンスがやってきた。妻が通う語学学校のクラスに、韓国からの留学生もいるのだ。妻は最初、その彼女と少し仲良くなってからセターレちゃんには紹介しようかと考えていたらしい。だが何かのタイミングでそれを伝えたところ、「すぐにでも紹介してほしい」という当然の反応が返ってきた。結局、風邪をひいていた韓国人留学生が回復するのを待って、今日念願の昼ご飯会が開かれた。昨日妻のところに電話が来て、「どうやって振舞えば嫌われないかな?」と、妻はめでたく恋のキューピットのような役割を担うことになった。ご飯を食べている最中も、セターレちゃんはかなり緊張していたようで、勉強してきた韓国語は一言も話せなかったようだ。

私たちの目下の懸念は、韓国人留学生という最高の友人を見つけたセターレちゃんから、ポイっと捨てられてしまうことだ。カムサハムニダ。



【ひとことペルシア語154】dahanam sarvis shode(ダハナム サルヴィス ショデ)
:「くそ!!」を意味する口語。よほど仲の良くない限り、異性の前で使用するのは避けた方が無難。なぜなら、dahanamは、"私の歯"、sarvisは、"トイレ"を意味するからだ。




【書物で知るイラン24】
『イスラームとモダニティ』 中西久枝著、風媒社
:著者の専門領域であるイランにおける女性を取り巻く現状など、いくつかのテーマで現代(2000年代前半)のイランを描いた作品。筆者が専門とし、かつ常に問題意識をもっていると思われる女性とイスラームについて取り扱っている7、8章は、2010年代後半の今から見ても非常に勉強になる部分。特に革命後、イランの女性がどのように法的な権利を獲得してきたかについては、細かいところまで描写されていてとても参考になった。

他方、ずぶの素人である私がいうのもおこがましいが、例えばイスラームがどのように植民地主義に向かい合おうとしたかを扱った章などは、全体の構成上この部分を入れざるを得なかったのだろうが内容が浅いように感じられた。また、「現代イランの諸相」と銘打ちつつ、ほとんどの章が"イスラームと○○"とまとめられており、狙いが不明瞭な部分もある。更に誤植、意味が不明瞭な文章も他の学術書に比すと多かったように思う。



*なお、本記事は筆者の個人的な経験に基づいて記載されており、筆者の所属する組織の見解を示すものではありません。

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イランの首都テヘランに駐在中の筆者が見た、この国の模様を執筆するブログ。駐在先としてあまり聞かないと思われるイランの様子を肌で感じられるような記事を週に一回アップ中です!

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