いつの頃からか、親米、反米という言葉に、違和感を覚えていた。なぜなら、字面だけでは米国との距離を示すのみの意味なのに、それ以外にそうレッテルを貼られた対象の価値を判断している場合が多いと感じたからだ。特に反米の場合にこれが顕著に表れているように思う。
さて、そんな「反米」である当駐在国を、何気なく「反米」と使っている皆さんよりも更に嫌っているのが、当のお国のトップである。別に嫌っているだけならいいのだが、年明け早々、またまた身勝手な行動を遂行した。しかも今回は、多くの識者が指摘するように、越えるべきでなかった一線である。
本件に関する政治的な分析は、すでに多くの媒体で行われている(←素人目に見ても、そのいくつかには失笑を禁じ得ない)、このブログの主旨と外れてしまうため、ここで新たにはおこなわない。
当該司令官が殺害されたと発表された翌日、早くも街の一部のポスターが彼の写真入りのものに取り換替えられた。街中で彼の写真が常に写真が飾られているという一部報道もあったが、さすがにそんなことはない。また彼の殺害後新聞の一面はスポーツ紙を除いて彼の追悼記事である。芸がこまかいと感字られるのは、色も黒を基調(普段はカラフル)としていることだ。テレビも左上に喪章がかけられた状態で放送している。有能(←もちろん、イランを敵とする国からすれば不俱戴天の仇となるが)な司令官を失ったダメージが大きいことが察せられる。怒り、というよりは悼みという印象だ。
また街のみなさまも、私が思ったより、落ち込みムードで支配されていた。この国には、その体制を支持する人、支持しない人、あまり関心のない人、様々にいるのだが、そのような人たちが平均的に訪れると思われる街の水タバコ屋でも、喪服(黒い)を着た人が3割ぐらいいたように思われる。ちらっと聞いたところ、普段全くそんなそぶりを見せない知人が、いくつかある追悼イベントに参加すると言っていた。
昨日乗車したタクシーの運転手は、次のように嘆いていた。
「制裁だのなんだの(と、それに起因する物価上昇)で散々生活を苦しめておいて、今度はISを食い止めてくれた*人まで殺してしまうとは…」
*殺害されたソレイマーニー司令官の功績として、国内的にはISのイランへの侵入を食い止めたということが挙げられている。
今回の出来事でも、一般の人々に与えられたダメージはとても大きいようだ。
【ひとことペルシア語170】khoda biyomorzad(ホダー ビヨモルザッド)
:”神のご加護を”と言う意味のフレーズ。文章でも用いられる。
*この記事は個人の体験に基づいて記載されており、筆者の所属する組織の見解とは全く関係がありません。
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