線路のない鉄路
6日(金)曇。被災地報告が長引いて、教科書の右傾化問題が中断してしまった。この報告も長くなりそうである。敗戦直後は教科書も教師も自由で学校が生き生きしていたという報告までしたのだが、再度右傾化が始まるのは63年の教科書無償と採択の広域化である。
前回、シンガポールの教科書が1年で改定される話を紹介したが、教科書検定が誤字脱字に限られるからである。日本の教科書は改訂に4年もかかる。当然、生徒は古い資料で学ぶことになる。明治初年や戦後初期は自由発行・自由採択だったから、今の右翼的な育鵬社や自由社のような教科書もありだった。
社会科は26種も発行されたが、その中に右翼的なものは勿論なかった。売れないからである。自由採択、つまり、全国の学校で現場の教師が自由に調査し、議論して選べば、最大公約数的な民主主義の視点に立った、歴史学の通説に則った教科書が採択されるのは理の当然だったのである。
寸断された南三陸鉄道
63年の教科書無償化の実現は憲法第26条に「義務教育はこれを無償とする」とあるように、親や教師の当然の要求に過ぎなかったが、政府・自民党はそれと引き換えに教科書統制を強めることになるのである。タダより高いものはないの喩通りになってしまった。
その後の経過を詳しく報告したいのだが、後日に回すことにする。昨日のニュースに大阪府立の公募高校校長の万引き事件が報じられ、コメントを求められた大阪市長・橋下徹氏は「公募校長以外にも変な教師は一杯いる」公募校長の相次ぐ事件に全く反省がない。
そもそも校長の公募制導入の元祖は石原元都知事であり、その趣旨は教育現場に競争を導入することだった。彼の発言集の中に「教育は競争だ」や「破壊的教育改革」があるが、99年の知事当選以来、まさに公約通り教育現場を破壊し、その害毒を全国に及ぼした。
田老町の仮設住宅
公募校長は既に新潟でさえ導入されており。極めて不評であるが、市は総括さえしない。今読み始めた本に元都立高校校長を務めた渡部謙一著「東京の教育改革は何をもたらしたか」がある。氏は私と全くの同年で、私の体験と重なる部分が多いが、相手は石原任命の都教委だった。
都教委の打ち出す政策には、在職中もそのひどさには度々腹を立てた記憶があるが、ここまで露骨で強圧的だったとは。橋下が石原を師と仰ぎ、やろうとしていることが石原の二番煎じなのだ。やり口は安倍晋三のやり方、人事権の乱用から始まり、第三者機関を装う有識者会議設立である。
石原は都知事になった時、中曽根康弘氏に「これだけはやれ」と言われたのが教育の破壊的改革だったと。それもやり足りなかったらしく、都立高校は今もよくなっていないと。今度は日本維新の会を分党し、その破壊を国政の場でやるのだと張り切っている。同調者が23名も集まる。これが今の日本の世相だ。
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