KLの古いモスク
4日(金)曇。教科書問題は一先ずこの号で終わりにしたい。地教行法の改悪によって教育委員会制度はさらに形骸化し、教科書採択も保守的な首長の市町村で例の新しい歴史教科書をつくる会系の教科書採択が増えるのは確実だろう。育鵬社と自由社の教科書である。
新潟市では教科書センターで全教科書を常備し、市民はいつでも閲覧できる。先日10年ぶりにセンターに行き、半日かけて育鵬社の教科書を中心に読み込んできた。つくる会の人々は他社を批判する際の常套句は「自虐史観」「拉致問題や領土問題の扱いが小さい」
歴史教科書の執筆陣は育鵬社は渡部昇一、八木秀次、岡崎久彦、自由社は藤岡信勝、西尾幹二、高森明勅等。共通しているのは歴史研究者ではなく、右翼的な政治運動に関わっている人たちが中心になっている。ざっと両者を比較しても自由社の方がより右翼的だ。
バス切符売り場は鉄格子
韓国併合についての記述をみると、「韓国と日韓議定書を結びました。これは韓国の領土を他国(ロシア)から守るために日本軍が韓国内に展開することを認めるという内容でした。(育鵬社)朝鮮の鉄道・灌漑施設をつくる等の開発を行い、土地調査を実施しました(自由社)」
両社とも強制連行や創始改名などには触れていない。南京虐殺についても「この時は日本軍によって中国の軍民に多数の死傷者が出た。犠牲者数についてはさまざまな見解があり論争が続いている。(育鵬社)」多数の死傷者が出たことについては自由社も触れている。
沖縄戦についてはどうか。育鵬社は「4月になると米軍は沖縄本島に上陸し、激しい地上戦が繰り広げられました。日本軍は沖縄県民とともに必死の防戦を展開し米軍に大きな損害を与えました。また若い兵士たちの航空機による体当たり(特攻)や・・・。」
ワンマンバスは同じ
これが彼らの言う「誇りある日本人」を教えるということなのであろう。東京書籍版のような「日本軍によって集団自決に追い込まれた住民もいました」のような記述は見当たらない。憲法の制定過程も育鵬社版はマッカーサー案を「政府に受け入れを厳しく迫った」といわゆる押しつけ憲法論を展開。
エネルギー問題について東日本大震災前のものがそのまま使われており、育鵬社は「放射性廃棄物の処理処分に配慮しながら増大するエネルギー需要をまかなうものとして期待されて・・」東京書籍でさえ「二酸化炭素を出さない、ウランを繰り返し利用できる利点がある」
私が気になったのは、育鵬社や自由社の中味よりも東京書籍等の記述の内容が限りなくつくる会系の教科書に近づいてきたという点である。つくる会系からの批判を恐れ、或いは検定を通過し易くするために、自己規制が始まっているのではないかと疑われる。
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