三国山のガレ場
15日(水)社会保障と言えば、一番分かりやすい例が生活保護で、どこの国の歴史も先ずはそこから始まっている。国が貧しい人々を救済するという考え方である。ところが、資本主義の発展によって、企業に雇用される労働者の生活保障が社会保障の中核となった。
だが、今や日本の労働者の生活保障はドイツとは似ても似つかない状況である。例えば、ドイツ企業の経営者は不況で受注が減っても、すぐに従業員を首にはできない仕組みになっている。クルツ・アルバイト(短時間労働)という独特の制度によって社員は守られる。
企業は連邦労働庁に短時間労働制度の適用を申請し、社員の労働時間を短縮する。労働時間の短縮によって社員の給料は減るが、連邦労働庁が給料の差額の67%を社員に支払う。さらに年金保険、健康保険、介護保険などの保険料も政府が払ってくれるという仕組みだ。
越後の山々
短時間労働の支援を受けられる期間は最高半年だったが、リーマンショック以降の経済危機で、09年から支援期間を1年半まで延ばしたという。ドイツの経営者は社員教育、研修に時間とコストがかかるから、経験豊富な社員を失わなくて済むと考えるのだという。
連邦労働庁によると、09年1月の時点で短時間労働制を利用した企業は1万600社。約29万人の勤労者が解雇から救われたと。この制度はオーストラリアにもあるが、米英仏にもない制度だと。38%もの非正規社員やブラック企業などの問題を抱える日本と比べよ。
こうした労働者の権利が保護される背景には労働組合の力の差も大きいと。つまり企業別労働組合が日本と比べ物にならない強い影響力を持つ。株式会社には取締役会の上に監査役会があり、組合はこの監査役会にも代表を送り込むことができる。経営の監視役だ。
大名も通った立派な山道
さらにドイツには「従業員を解雇から守る法律」という法律があり、試用6か月後から適用され、在職年数が長く、扶養家族を持つ従業員程解雇し難い仕組みがあるという。日本の大企業、自動車、電機、鉄鋼など大半は御用労働組合であり、連合もまた同様である。
最終的に解雇されたとしても、すぐに失業者にはならない。ハローワークに行くことになるが、労働局が年齢や国籍に関わらず、多額の金を払って職業訓練を受けさせる。この間、家賃や社会保険料も国が払う。訓練を受けている人は失業者としてカウントされない。
日本は消えた年金問題で、ようやく「年金定期便」が届くようになった。今考えると、それまでなぜ疑問を感じなかったのかと恥じる。ドイツでは90年代頃から、市民に対し保険料の納入実績と、将来の年金支給額の見込みに関する通知を年一回送っているという。
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