赴任先での生活
シンガポールでエアコン修理が3ヶ月放置された話~海外生活で学んだ「主張する力」~
シンガポールでの生活は、高層コンドミニアムに、年中暖かい気候。一見、完璧な楽園に見えますよね。でも、そのキラキラした生活の裏側には、避けては通れない「地味でタフな戦い」が潜んでいます。それは「壊れたものが、直らない」という絶望との戦い。今回は、私がシンガポールで体験した「エアコン修理3ヶ月放置事件」についてご紹介します。日本の「察する文化」を捨て、現地のリアルな立ち回り方を学んだ、血と汗(文字通り暑さによる汗)の記録です。
公開日:2026年3月17日
この記事で書かれていること
冷えなくなったエアコンと淡い期待の始まり
事件の始まりは、ある日の夜。リビングのエアコンから、生ぬるい風しか出なくなったことでした。外気温は31度、湿度は80%超え。シンガポールにおいて、エアコンの故障は単なる不便ではなく、生活の質を根底から揺るがす「死活問題」です。私はすぐに、オーナー側のエージェント(代理人)に連絡を入れました。「エアコンが冷えません。早急に対応をお願いします」この時の私は、まだ日本から持ってきた「美徳」を信じていました。「一度伝えれば、プロであるエージェントが適切に手配してくれるはず」「何度も催促するのは失礼だし、相手を急かすのは控えよう」。しかし、この「奥ゆかしさ」こそが、長期戦を招く最大の原因だったのです。
「原因判明」から始まった、3ヶ月の沈黙
修理へのステップは、最初は順調に見えました。
【2週間後:最初の調査】
連絡から2週間、ようやく1人の業者がやってきました。彼は手際よくチェックし、こう言いました。「うーん、これは単純な故障じゃないね。エアコンの配管(ガス漏れ)か、それとも本体自体が悪いのか。切り分けのための詳しい検査が必要だ。来週また来るよ」
【その翌週:検査完了】
約束通り翌週に検査が行われ、原因が特定されました。「エアコンの配管からのガス漏れ」。原因さえ分かれば、あとは修理するだけ。私は「これでやっと涼しい夜が戻ってくる!」と確信しました。ところが、ここから地獄の「音沙汰なし」が始まったのです。1週間待ち、2週間待ち…。こちらからエージェントに「検査結果はどうなりましたか?」「修理の日程はいつですか?」とメッセージを送っても、返ってくるのは「確認中だ」「業者と連絡を取っている」というテンプレートのような返事だけ。次第に既読スルーさえ増え、我が家がサウナのような空間に変わり果てました。

「察してちゃん」は赤道直下で報われない
この3ヶ月間、私は周囲の友人たちに相談しました。すると、返ってくるのは驚くほど似たようなアドバイスばかりでした。「えっ、毎日連絡してないの?ダメだよ。1日1回は『まだか』って連絡しないと!」「エージェントなんて、何十軒も抱えてるんだから。連絡が多い人から順番に対応するに決まってるよ。黙っていたら後回しになることもあるよ。」ここで私は、シンガポールという国の「ルール」を理解しました。日本では「一度言えばやってくれる」のが信頼関係ですが、ここでは「何度でも言い続けること」がリマインドの役割を果たすのです。「察してほしい」という姿勢ではなく、自分の要望を明確に伝え続けなければ、物事は動きにくい。それが私の実感でした。
裁判を辞さない「最後の一撃」
3ヶ月が経過した頃、私の忍耐はついに底をつきました。そこで私は、感情的な怒りではなく、事実と契約内容に基づいて伝える方法に切り替えました。これまでの全経緯と未対応の記録を整理し、こう送ったのです。「すでに3ヶ月が経過しています。これは賃貸契約上の修繕義務に関わる問題だと認識しています。このまま具体的な進展がない場合は、正式な手続きも検討せざるを得ません。至急ご対応をお願いします。」
結果は劇的でした。
あれほど連絡が滞っていたエージェントから、数時間後に返信が来たのです。
「今、業者と最終調整した。明日行かせる。」3ヶ月間の停滞が、一気に動いた瞬間でした。
「郷に入れば郷に従う」の本当の意味
この一件で私が学んだのは、「強く言えば通る」ということではありません。「現地の標準に合わせて、自分の振る舞いを最適化する」ことの大切さです。
怒るのではなく「標準」を書き換える。最初は「なんでこんなにいい加減なの!?」と腹が立って仕方ありませんでした。でも、ある時からこう考えるようにしました。
・日本:連絡すればすぐ来るのが100点(当たり前)。
・現地:こまめに連絡し、時間がかかっても最終的に解決すれば成功。
そう割り切ると、不思議とイライラを溜めずに済みます。怒りのエネルギーを消費するのではなく、「必要な確認作業」として淡々と行う。これが、海外生活でメンタルを保つための一つの方法だと感じました。
<セルフケア視点でのメンタル管理>
・期待値を調整する:最初から即対応を前提にしない。
・自分の権利を守る:主張することは、わがままではなく、自分と家族を守る行動。
これから渡航するあなたへ
私のケースは一例ですが、シンガポールでの生活では「主張」が必要になる場面が少なくありません。
もし今、トラブルの中で「言いづらいな」「申し訳ないな」と悩んでいるなら、思い出してください。
1.こまめな連絡は失礼ではない。
2.感情よりも事実と契約を基準に伝える。
3.「察して」に期待しすぎない。
3ヶ月ぶりに使えたエアコンの涼しさとともに、「この国で生き抜く術を一つ覚えた」という確かな手応えを感じました。
トラブルは、その土地で暮らす力を育てる通過点。
主張することを恐れず、自分と家族を守りながら、このエネルギッシュな国での生活を楽しんでいきましょう。
▼Rina (セルフケアなび アンバサダー)
元薬剤師で現在はシンガポール在住。
教育マガジンのライターやに加え、夫婦会議アンバサダー®︎、シンガポールでは様々なボランティア活動など、幅広く活躍する。自身の赴任経験を軸に、セルフケアからファミリーケアへのお話をセルフケアなびで発信中。セルフケアなびは【海外生活をセルフケアでもっと楽しむ】をモットーに海外生活の土台を一緒に作るセルフケアコミュニティです。イベントや活動についてはこちらから随時発信しております。
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